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リスクマネジメントとしての社葬

社内規定の整備、資金の準備が成否を決める

「社葬(会社の葬式)」とは会社に多大な功績を残した人物が亡くなった際に、社名を使用し、費用を会社が負担し、人的な援助を行う葬儀のことです。業務上の事故などで亡くなった社員も社葬(会社の葬式)となるケースがありますが、最も代表的な事例と考えられるのは、経営トップの死去の場合でしょう。

会社の葬式の果たす役割を整理してみると、
  1. 故人を追悼し、会社に対する功績を称え、その魂の安らかなることを願う
  2. 企業として故人の功績を遺族に伝え、遺族を慰める。
  3. 重要な人物を失った組織のメンバーの悲しみに区切りをつける。故人を失ったことを、社内の結束を強固にする機会とする。
  4. 故人を通じて会社が社外にお世話になったことへの感謝を伝える。
  5. 会社の継承を内外に知らしめ、その新体制をお披露目し、「故人亡き後も、引き続き弊社をよろしくお願いいたします」と支援をお願いする。
  6. 会社の葬式を立派に行うことで会社のイメージアップを図る。 
などが考えられます。 

前の4項目は、個人葬にも共通する要素ですが、5、6については会社の葬式ならではのことになります。
経営のトップを失うことは、その会社にとっては大きな危機と考えられます。
特に創業者や、その会社の根幹にある技術や営業力につながる社員の場合は、その会社を成立させていたキーパーソンを失うことになるわけですから大変なことだといえます。

オーナー企業であれば、こうした損失に加えて株式などの相続の問題も発生します。
生前は処理しなくてもよかった会社との貸借関係の問題を抱えている企業も少なくないでしょう。

死去に伴い役員を退任するわけですから、退職慰労金・弔慰金をどうするのか、などの問題も出てきます。
また、会社の葬式の費用の支出についても税務処理が必要になり、税務の関係と絡んでくることになります。
ここであいまいな処理をすれば、企業の社会的イメージにもかかわってくるだけに慎重な取り組みが必要になるはずです。

一方、従業員という「家族」のリスクについてきちんと対応している企業経営者の方は意外と少ないのではないでしょうか。
もちろん、経営者の最大の責任は、企業の継続と発展を図ることにあるわけですから、日常的な営業活動や生産活動が最大のリスクマネジメントです。
しかし、ご自分に万が一のことがあった場合のことも考えておかなければなりません。前述したように、経営者の死は最大のリスクになりかねないのです。
それをチャンスに変えるためには、十分な資金が必要になってきます。それを準備しておくことも、経営者の責務であるといえるのです。
また、故人の付き合いを次のトップや会社の総務部門がきちんと把握しているかというとなかなかそうはいかないものですので、会社の葬式を執り行うことが一番効果的な通知にもなります。

こうして「危機」を「チャンス」に変えていくことが、まさしくリスクマネジメントになるわけですが、それもきちんとした会社の葬式運営がなされた上でのことです。
会社の葬式は、社会的にも失敗の許されない重要なイベントといえるのです。